「母の最後の部屋になるかもしれないから、美しい空間を」
- Mayumi Matsunaga

- 8月6日
- 読了時間: 4分
数年前に、マンションのトータルコーディネートをご依頼くださったクライアント様から、あらためてご相談をいただきました。
「母が高齢者施設に入ることになったんです。最後の部屋になるかもしれないから、美しいものに囲まれて、穏やかに過ごしてほしいんです」
そうお話しくださったY様の目には、感謝と愛情、そして覚悟のようなものがにじんでいました。
Y様は、かつてご自身のお住まいを整えたときに、
「世の中にはこんなに美しいものがあることを、初めて知った」
とおっしゃってくださいました。
そんなY様が、お母様の空間にも「美しさの力」を届けたいと願われたこと、
とてもありがたく、心をこめてお手伝いさせていただきました。

「綺麗ごとだけではない」からこそ
高齢のご両親を見守るというのは、決して“綺麗ごと”だけでは済まされない現実があります。
そのご家族ごとに、さまざまな事情もありますし、どんなに美しい家具や収納を整えても、認知症のために汚してしまったり、収納したものを探せなくなってしまったり。
そうなると、「インテリアなんて意味がないのかもしれない」と思う瞬間も、あるかもしれません。
それでも私は、目に映るもの、手に触れるもの、記憶に残っているもの。
それらは、たとえ無意識であっても、その方の“生き方”に寄り添い、人生の後半戦に、ふとした瞬間でもいいから、色どりを添えてくれるものだと信じています。
だからこそ、今回のご依頼には、心から向き合いたいと思いました。

限られた空間でも、「好き」がある
ご依頼いただいたのは、施設のお部屋に置くチェストと椅子、テーブル、そしてカーテン。
限られたスペースだからこそ、毎日ふれるものには上質を。
家具は、デザイン、掛け心地、重量、ブランドの信頼性までトータルに吟味し、旭川に本拠地があるブランド「カンディハウス」からセレクトいたしました。
カーテンは、いくつかのサンプルをお持ちして、最終的にはお母様ご自身にお選びいただきました。
「きっとアートな柄をお選びになるのでは」と思っていたのですが……その通り!
フジエテキスタイルの担当者さんも、「ハイセンスな生地を選ばれる方ですね」と仰ってくださり、我がお客様ながら、自慢したくなり、嬉しい気分になりました^^

「この景色が好き」——その言葉が宝物に
完成後、お母様がひとこと。
「この部屋に入って来るときの景色が好き」
その言葉は、インテリアコーディネーターとして本当に嬉しく、ご家族の想いがちゃんと届いているのだと、胸が熱くなりました。
もし、このカーテンや家具に飽きてしまったら……
その時は、また次のご提案をいたしますので、どうかこれからも、長く元気にお過ごしくださいませ。
Y様、このたびもご依頼ありがとうございました。

p.s.
一旦インテリアが整ったところで、現在は、クローゼットの中やチェストの引き出しの中、洗面台廻りなど、お母さまやヘルパーさんが使いやすいように、整えはじめています。
ここは、プロの整理収納の方にバトンタッチ! 先日、引継ぎに同行しましたが、その日のほんの数十分の時間でも、ささっと順番を入れ替えたり、仕分けをして、みちがえるようにスッキリしました。さすがプロ!!インテリアの美しさももちろんなのですが、「収納」が整っていると心地良さが倍増しますね!

メイデザインでは、「身近な人のために空間を整える」——そんなご相談もお受けしています。「インテリアなんて関係ない」と感じる現実もあるかもしれません。
それでも、ふとした時に心を満たしてくれる「インテリアの力」を、私は信じています。
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